医療用語集 tttake’s diary

医療用語研究(勉強)  略語・隠語・ドイツ語・英語・カタカナ語などを紹介・おすそ分け。

「イトラコナゾール錠への違薬混入」事件の話 ① 製造現場経験者の目で

「同社によると、同錠剤を作る過程で、機械への付着などで目減りする原料を継ぎ足す際に、主成分と睡眠導入剤成分「リルマザホン塩酸塩水和物」の容器を取り違え混入した。混入した量は1錠当たり、睡眠導入剤で通常使用する最大投与量の2・5倍に及ぶ。」と報道されている。 固形剤・錠剤の製造現場や試験の経験者として以下を書きます。

イトラコナゾール錠50「MEEK 」50mg製剤 抗真菌剤 白癬やカンジダ症等の治療薬
リルマザホン塩酸塩水和物 ベンゾジアゼピン系睡眠剤
睡眠導入剤で通常使用する最大投与量の2・5倍に及び =5mg錠が出来ていた。
添付文書では「麻酔前投薬なら、通常、成人にはリルマザホン塩酸塩水和物として1回2mgを就寝前又は手術前に経口投与する」となっている。
一方、イトラコナゾール錠では、「爪白鮮の場合、通常、成人にはイトラコナゾールとして1回200mgを1日2回(1日量400mg)」  50mg錠なら8錠の服用可能性
もし、この危ないイトラコナゾール錠を8錠服用したら、リルマザホンとして40mg(最大投与量の20倍)の可能性があるということ、そら半分でも、これで車を運転したら事故も起こすやろなあ・・朝食後にも飲むんだし・・・

イトラコナゾール錠50「MEEK 」 =230mg(うち主薬が50mg)
錠剤全体  100000錠×230mg=23000000=23000g=23kg
主薬 50mg×100000=5000000mg=5000g=5kg  賦形剤=18kg 
間違って混入したリルマザホン    5mg×100000=500000mg= 500g

製造の途中で、目減り分を一割(500g)も足そうとするのか? 考えられない

以下、考察します

①現在の情報から考察すると、10万錠分23kgの製品(内主薬が5kg)を作る途中で、目減り分を500g加えようよとしたことになる。(間違って他剤の主薬を500g追加したんだけど) 製造途中で1割も主薬が目減りする? 聞いたことないなあ・・・・
形成前(打錠機の前)の顆粒の状態で定量試験でもしたのか?うーん考えられない


②普通なら、製造している薬の主薬以外の薬が近くに(間違えるぐらい手の届く近くに)あるはずが無い。その日製造する主薬・賦形剤等の必要なものだけを薬品倉庫からその管理者を通してチェック・出庫管理し、製造現場にはそれ以外の薬(原料も)があるはずも無い。実験室・ラボでの試作なら、各種の薬が棚に並んでるけど医薬品製造現場では考えられないぞ! 一体どんな管理をしているのか、これが、ものすごく恐ろしい。同じ日に同じ現場で同じ人が、複数の薬を製造してるのか?しかも事件発生時には一人で作業していたなんて、医薬品を作る姿勢では無いぞ! 製造現場のすぐ横に(専門の管理者の居ない)薬品庫・薬品棚でもあるのか? これって他の薬は大丈夫なのか? この会社で製造した全商品でコンタミの検査をすぐにやるべきやぞ

追記 14日から同社が製造・販売する全289品の出荷を自ら一時停止したと明らかにした。 誰が考えてもそうするしかないよなあ・・・最後は吸収合併の道しかないかも


③そもそも、錠剤で10万錠を作ると言うのが、製造量として少なすぎる。(3年の有効期限で) 多品種・少量生産で色々な薬を同じ場所・ラインで作るから間違いが起きると思う。 全大量で23kgの粉? 町のうどん屋の製造量の方が多いぞ(同じような小型の造粒機を使ってるんだろうね) 最新の大型打錠機なら10万~20万錠が1時間で出来るぞ、1万錠なら、3分~6分? まあ、この薬の打錠は普通1時間位で打錠は完成するよね  10万錠を1年で売り切るとしても、10万割る12ヶ月=8333錠 
100錠包装なら、月に83箱の売り上げ 半年でも月に166箱  これ利益出るの?


④今回のような勘違い?事故を防ぐには、同じ薬だけを作る「専用ライン」で行うのがベスト。機械・器具も専用にすれば、コンタミもゼロに近づくが、これは理想論だね。
まあ後発品の場合は難しいけど、後発品メーカーが大合併して3社~5社ぐらいに集約すれば確実に大量生産になり、間違いは減るはず。 薬によっては、30社以上もが同じ薬の後発品を作る?  

これも、どう考えてもおかしいやろ? 政治主導ででも何とかしないとね      全国の後発品の専業メーカがカワイソウや、大きく信頼を失ったことになるよね

⑤ちなみに、今回のこの事件は全国の普通の製薬工場にとっては、何の教訓にもならない。もし、普通の製薬現場で同じように間違って違う薬の主薬を混入させようと思ったら? よほどの悪意で、違う薬の原薬を隠し持って現場に入り、スキをみて混入させるぐらいしか考えつかない(これも、使用原料・原薬は計量管理されているから、かなり難しい)。違う薬を混入させるためには、その薬の出庫手続き(昔は出庫伝票を書く、今なら・バーコードでのコンピュウター管理)を行ったうえで、一度着替えて(製造現場では専用の服を着用しているため)倉庫で担当者からその薬を出庫してもらい、持ち帰って、また着替えて、製造現場に持って帰って混入させるような行動が必要となる。当然、他の同僚や上司のダブルチャックも受けるし、どう考えても難しい。